実践例 やまびこの教育内容と指導について ― その2 ―

2学期の子どもの育ち
サイコロ作り

指導者 佐藤優子
平成21年度生 年長

 12月4日(金)

 


2便の降園バスを待つ時間奈穂が、「先生、お絵かきして遊ぼう。」と、声を掛けてきた。「じゃ、絵を描きながら双六を作っていかない?」と、話をすると「作る!!」と、元気な声が返ってきた。すると、近くにいた侑夏も「私もやりたい!!」と、声を掛けてきた。奈穂・侑夏が絵を描き双六の内容は、子どもたちと話し合って決めていくことにした。「できた!!」と、出来上がった双六を嬉しそうに手にとり、「先生、明日はサイコロを作るから紙を用意しておいてね。」と、言われた。

土日を挟み月曜日、奈穂と約束をしていたのでさまざまな紙を保育室に用意しておいた。薄いわら半紙、広告用紙、色画用紙、段ボール、マス目の入った厚紙。サイコロを作るのには、マス目の入った厚紙が最適だとすぐ思いつくが、このマス目は一つずつが長方形のマス目なので、サイコロを作るのには適していない教材だった。奈穂が登園してくると、「先生、紙用意してた?」と聞いてきたので、「うん。ちゃんと用意してあるよ。色々な紙を用意していたから好きな紙を使ってね。」「うん。わかった。」と、奈穂の返事が返ってきた。奈穂は、手際よく朝の支度を済ませると、サイコロ作りにとりかかった。先週双六を一緒に作った侑夏も一緒に作り始めた。二人の姿を見て、皓太が興味を持って、「皓太も作っていい?」と聞いてきた。皓太は、絵を描いたり物を作るのが得意であった。奈穂も侑夏も快く皓太の参加を認めた。そして、3人は示し合わせたように長方形のマス目の入った厚紙を選んだ。
皓太は、「サイコロだから、この間の付録みたいに作っていけばいいんだな。」と、独り言を言って作り始めた。奈穂と侑夏は、会話もなく始めた。皓太は、長方形のマスを3個続きで、2枚切り取った。×2枚。この2枚をどのようにサイコロにしていくのか不思議だった。すると、線に合わせて皓太は折り目をつけていった。 この出来上がった紙を交差させるように組み合わせると長方形をした四角柱ができた。
組み合わせたものの組み合わせたところが少し隙間があいていた。すると今度は、少しだけ紙を付けたして隙間を埋めていったのだ。「よ〜し、あとは駒の目を書いていくだけだ。」と言って、鉛筆を取りにロッカーに向かった。鉛筆を片手に持った皓太は、ワクワクしていたように見えた。「あれ?書けない。」皓太は、隙間を埋めるのに、セロハンテープをたくさん貼ったので鉛筆では駒の目を書くことが出来なかったのである。皓太のことだからきっとこのことに気づいてマジックを持ってくるだろうと思っていた。しかし、皓太は今作ったばかりのサイコロの面より一回り小さく紙を6枚切り、その紙にサイコロの駒の目を書きテープで張り出し、「よ〜し、これで出来たぞ。」ととても満足していた。

侑夏は、皓太より一マス多い4マスを2枚切り取った。×2.侑夏は、この2枚の紙を折り線を付けるわけでもなく、くるっと丸めて二つを組み合わせた。だから、侑夏の作ったサイコロは丸みが帯びていてサイコロには程遠いものであった。、早速出来上がったサイコロに駒の目を鉛筆で書いていた。「やっとできた。8までサイコロの目が出来たよ。」「えっ?サイコロは6までだよ。」と、皓太。しかし、侑夏は、自分の作ったサイコロに満足していて、「いいの。」と、皓太に話をしていた。

奈穂は、侑夏より一つ多い5マスを1枚切り取っていた。×1.奈穂は1マスをのり代部分として使い長方形の四角を1つ作った。そして、サイコロの形にするのには、出来た四角の上下をふさがなければいけないと思っており、出来たサイコロをマス目のついた厚紙の上に置きおおよその予測で底になる部分を切り取った。しかし、大きさが合わない。もう一度四角を厚紙の上に置き目測で紙を切った。やはり大きさが合わない。3度目も同じ行為を繰り返したが、大きさが合わず、今度は、作った四角マスを厚紙の上に置き、鉛筆で四角の大きさに合わせて蓋(底)になる部分を描きだし切り取っていた。この時も、四角が紙から動かないようにテープで抑えたりしていたが、そうすると今度は鉛筆で書きだすことが出来ないことに気づき、慎重に底の部分を描きていた。何とか2枚出来上がったが、ほんの少しだけ小さかったので、何とかテープで張り合わせ隙間を埋めていた。奈穂も、自分のサイコロに満足して、鉛筆で駒の目を書いていた。


この時、皓太にポケットに忍ばせていた本物のサイコロを見せた。「皓ちゃん、これ。」「あっ、サイコロ。」「そうだよ。このサイコロよく見ると、面白いことがわかるんだよ。サイコロにはルールがあるんだよ。1の後ろは何になってる?」「6」「そうだね。じゃ、2の後ろは?」「5」「3の後ろは?」「4」「そう。何か気付かない?1と6をたすと?」「7」「2と5は?」「7。あっ!!たすと二つで7になるんだ!!」「そうなんだよ。これがねサイコロを作る時のルールなんだ。」
「奈穂」と、私が奈穂に声を掛けただけで、奈穂は、私が何を言おうとしているのかすぐわかったようで、「適当に書いたから、ちゃんとなってないよ。」と・・・。「でも、サイコロのルールはわかった。」

3人が一生懸命サイコロ作りをしていると、優心が、「ねえ、何してるの?」と聞いてきた。「サイコロ作ってるんだよ。」と、侑夏と奈穂が答えた。「あたしもやっていい?」「いいよ。」3人は、夢中でサイコロ作りをしているので、優心には言葉だけで返事をしていた。優心がサイコロ作りを始めようとしていたが、3人が使っていたマス目の入った厚紙は既に1枚もなかった。優心は、どうするのだろう?と思っていると、優心は、ピンクの色画用紙を持ってきた。この色画用紙をどのように使っていくんだろうと、興味深く見ていると、優心は、紙を5列に蛇腹折りにしていった。そして、その1列を均等に5個に区切っていた。この作業を全ての蛇腹折りにした。そして、5列全てを5マスに区切り終わると、紙を広げなおして、折り目がついていたところを一本一本丁寧に線を引いていっていた。

 と、鉛筆だけできれいな方眼紙を作った。そのあと優心は、1列ずつ切り取り、奈穂と同じようにのり代をとりながら四角を作っていく。奈穂との違いは、優心の方眼紙のほうが正方形に近かったので、サイコロに近いものであった。また、優心のサイコロは、厚紙より強度がなくその強度を補うために残った紙の1列を小さめの四角を作り中に入れ込んだのである。サイコロが出来上がると優心は、サイコロの目を書いていった。優心の書いたサイコロの目は、1の後ろには6.2の後ろには5.3の後ろには4と正確に書いてあった。「優心ちゃんのサイコロ、ちゃんとサイコロの目が書いてあるね。」と話すと、「先生と皓太君・奈穂ちゃんの 話聞こえていたもん。」と言っていた。

翌日今度は、佑月君がサイコロ作りをしていた。佑月君の作り方は、4人の作り方と全く違い色画用紙を正四角形の6枚切り、(×6)1枚1枚張り合わせサイコロを作っていた。そして、テープで貼り作っていたこともあって鉛筆ではサイコロの目が書けないとわかっており、初めからマジックを使って目を書いていた。

このサイコロ作りの中で、子どもたちは自分の考えの中で課題と向き合い自分の作り方をしていた。また、作っている間の長い時間言葉を交わすこともなく2時間余りの時間黙々と取り組んでいたことに驚かされた。出来上がったサイコロは5つとも全く同じところはなくオリジナリティ溢れるもので、素晴らしいものだと感じた。

 

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